「ASIOS」―超常現象を懐疑的に調査する会―のメンバーによるブログ。

2011年04月26日

トニー・アール『ムー文明の発掘』は「パロディー小説」だったのか!?

 藤野です。
 ずいぶんと間が空いてしまいましたが、ブログ第3弾です。

 トニー・アール(小泉源太郎訳)『ムー文明の発掘』(大陸書房、1973年) という本があります。帯には、「沈没大陸ムーへの現代の挑戦!! ムー大陸への仮説に熱情のすべてを傾けたチャーチワードの足跡を追って、新鋭の考古学者がムー文明(ムーロア文明)の解明に挑む!」と煽りの文句が記されていました。
 原書はTony Earll“Mu Revealed,1970”です(直訳だと「ムー解明」となるでしょうか。後述のボーダーランド文庫版カバーではなぜか、著者名を「Tonny」と誤綴りされています)。

 おおざっぱにいうと――著名な考古学者リースドン・ハードロップ教授が、メキシコで遺跡の発掘をおこなっていた。そこは、かつて、アメリカの鉱物学者ウィリアム・ニーヴン(William Niven 1850〜1937)が謎の石版を発掘した遺跡であった。ニーヴンの石版はジェームズ・チャーチワード『失われたムー大陸』のなかで、「ナーカル碑文」と並んで重要な資料となったものであるが、ハードロップ教授は「ムー大陸」の真相に迫るべく、「ナーカル碑文」を探そうとしたものの結局見つけることができなかった。次善の策として、教授はニーヴンの遺跡を発掘することで「ムー大陸」の信憑性を探ろうとしたのである。
 そして1959年、神殿の床下の石棺から新たにパピルス文書『ムーロア古写本』が発見された。古文書は紀元前2万1050年に生きていた青年神官クランドという青年の手記であることが判明する。1964年まで5年を要した解読によって、ムー文明(正式には「ムーロア」)の実像が解明される――
という内容です。

『ムー文明の発掘』の語る通りなら、「ムー大陸」実在説の有力な傍証となるはずだし、古文書の発見自体大変なニュースでしょう。
 白井祥平『呪いの遺跡ナン・マタール』(いんなあとりっぷ社、1971年)には紹介されていますが、本書を「ムー大陸」実在の有力な根拠に据えた著作には出会わないようです。古文書の発見の報道に接したこともありませんし、学研の『ムー』誌でも採り上げられることもないようです。なぜでしょう。

 どうやら本書には問題があるようなのです。大陸書房版は1997年10月には『衝撃のムー文明』と改題のうえ文庫化されています(角川春樹事務所刊)。このボーダーランド文庫本の袖には「本書で研究者たちを震撼させて以降、その消息は不明。経歴などはいまだに謎のままである」とあります。
 なんの「研究者たち」をどう「震撼」させたのかは定かではないし、解説の並木伸一郎氏も種明かしになるため避けられたのかもしれませんが、じつは著者の正体は分かっているのです。

「夜帆。@楽利多マスター」さんによるAmazonのリストマニア「@【 失われたムー大陸 】 の真相がわかった!―検索では見つけにくいものも集めてみました」に示唆されていました。

 本書はイギリス出身の魔女術実践家・作家のレイモンド・バックランド(Raymond Buckland 1934〜)の公式ホームページの「Bibliography」にも著作として、「MU REVEALED (pseudonym Tony Earll) Warner Paperback Library, NY 1970, 1972 - 50,756 copies in print」と載せられており、バックランドの作品であることは確かなのです。

 書誌では、Tony Earllはpseudonym=偽名とされています。 Wikipedia「Raymond Buckland」項によると、本書はチャーチワードに対するパロディー小説で、筆名Tony Earlは‘not really'(真実ではない)のアナグラムだとされています。

 Webサイト「Bad Archaeology」に掲載のキース・フィッツパトリック=マシューズ「The resurrection of Mu?」(「ムーの復活」2008年7月2日)によると、1976年までにはバックランドのいたずらであることがあきらになったと書いてあります。やはり、著者名Tony Earllは、‘Not Really’のアナグラムだと記したうえで、「チャーチワードのファンタジーをバックアップする証拠ではない」と断定されています。
 
 たしかにパロディー小説では史実の傍証にならないのはあたりまえでしょうが、こうしたことをわざわざ書かなければならないということは、欧米にも証拠だと思っている人が少なからずいるということなのでしょう。

 こうしたことはオカルト業界ではすでに知られている話なのかも知れませんが、今回、ASIOS『謎解き 古代文明』(彩図社、2011年)で「ムー大陸」の原稿を書くために、調べ直していて遅まきながら分かった次第です(もちろん傍証には使いませんでした)。版元は版権を交渉するわけだから、担当者が知らないはずはないと思うのですが、あるいは確信犯的に出されていたのでしょうか? 

 本書にはどこにも小説をにおわせる記載がないし、それどころかボーダーランド文庫版では、並木氏はチャーチワードに対する2つの疑問のうち、「粘土板を正確に解読したかどうか」の疑問に答え、「現実のものとして実証した」ものが本書であると評価されています(「解説 ムー文明は沖縄にあった!?」)。

 わたしも大陸書房版・ボーダーランド文庫版もノンフィクションだと思って、買っていたのですが……。いまとなっては、「パロディー小説」ではなく、チャーチワードへの「オマージュ小説」だったと思いたいところです。

 なお、バックランドには翻訳(楠瀬啓訳)『サクソンの魔女――樹の書 魔女たちの世紀3』(国書刊行会、1995年)も出ています(これを読むとバックランドは普通の作家ではありません。男性ですが、アメリカでガードナー派の魔女術を布教し、シークス・ウイッカと呼ばれる流派〈サクソン流魔女術〉を開いたことで知られる人物のようです。詳しくは本書の「訳者あとがき」を参照ください)。
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2011年04月24日

ASIOSの新刊『謎解き古代文明』が出ます。

 本城です。
古代文明カバー.jpg このたび、ASIOSの新刊『謎解き古代文明』が出版されることになりました。4月26日に下記の一部店舗で先行発売され、5月6日には全国の本屋さんでも発売予定です。

・ブックエキスプレス 東京駅北口店
・ブックエキスプレス 新宿南口店
・東武ブックス 池袋北店
・有隣堂書店 川崎アゼリア店

 今回、収録されているのは33項目(+コラム2項目)。本当はもう少し入れる予定だったのですが、ページ数が足りなくってしまった関係で(ページ数は304で、これまでと変わりません)、残念ながらいくつか割愛しなければなりませんでした。今回扱えなかった項目は、いずれ別の機会に扱いたいと思っています。

 さて内容の方は、どんなものを扱っているのかわかるように目次を以下に示しました。オーパーツが中心です。懐疑的な書籍でこれだけオーパーツを扱ったものは日本で初めてだと思います。
 ジャンルは特化していますが、こういったものに興味をお持ちの方は、ぜひご高覧ください。よろしくお願い致します。

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謎解き古代文明・目次一覧。
※備考やコメントがある場合は一言添えてあります。

はじめに――超古代文明の伝説を解き明かす(本城)
『謎解き 古代文明』収録項目の年代別早見表


第1章 驚愕の「南北アメリカの古代文明」の真相
1.ナスカの地上絵の謎【アンデス地方の有名巨大オーパーツ】(ナカイ)
 言わずと知れた超有名オーパーツです。今回はページ数が足りなくなったため元原稿の半分の量になってしまったのは残念ですが、その分、コンパクトで読みやすくなっています。

2.「インカの石組み」の超技術【超絶な強度と精度を誇る古代の叡智】(本城)
 よく「カミソリの刃も入らない」と形容される精緻な石組みです。石の切り出し、運搬、整形、石組みの4つに分けて、その方法を解説しました。

3.サンダルで踏まれた三葉虫の化石【ダーウィンの進化論は間違いだった?】(皆神)
 他に「ライムストーンカウボーイ」と「人間の指の化石」も扱っています。これらは創造論(人間や動物は神によって創られたとする説)と密接に結びついているのですが、そのあたりも詳しく解説されています。

4.謎のハンマー「ロンドン遺物」【オルドビス紀の地層から発掘された塩素合金】(ナカイ)
 これはよくオーパーツ本で数億年前のハンマーとして紹介されているものです。これまた創造論と関係しているので、そこも押さえて真相を紹介しています。

5.奇跡の石「カブレラ・ストーン」【古代人は恐竜と共存していた?】(本城)
 サイトで書いた記事を全面的に書き直して、ヴィンセント・パリスの調査結果なども新情報として追加しました。なおカブレラ・ストーンは肯定派でも極端に賛否が割れるオーパーツでして、浅川嘉富さんなどは絶賛する一方、南山宏さんや前川光さんなどは偽物扱いしています。

6.ミステリーストーンの謎 【空白のアメリカ大陸史を埋める驚異の発見】(ナカイ)
 オーパーツ本では「人面彫刻石」とか呼ばれています。19世紀に起きたアメリカのある流行を謎解きの鍵として解説。

7.コスタリカの巨大石球群【地球外の技術で作られた?完璧すぎる石の球】(原田)

8.エクアドルの縄文土器 【遙か昔、海を渡った縄文人がいた!】(ナカイ)
 これはややマニアックかもしれません。縄文人太平洋横断説の証拠とされるオーパーツです。真相では縄文土器や土器文化、太平洋の人類史の面白さがわかって読み応えもあります。

第2章 深遠な「ヨーロッパの古代文明」の真相
9.ノアの箱舟は実在した?【アララテ山の山頂で見つかった謎の木製遺物】(山本)
10.ストーンヘンジの謎 【いまだ謎が解明されない神秘の巨石建造物】(ナカイ)
11.クリスタル・スカルの真実 【世界を救う13個の聖なる水晶髑髏】(皆神)

12.アトランティス大陸の謎 【プラトンの著作に登場する幻の超大陸】(藤野)
 ページ数の関係で元原稿の3分の1ほどになっています。いろいろ削られてしまった分、本来あった藤野さん独特の凄みは消えてしまったのですが、それでも12ページありますから十分詳しい記事になっていると思います。補注や注釈で元原稿の片鱗を見ることができるかもしれません。

13.サラマンカ大聖堂の宇宙飛行士【中世の大聖堂に刻まれた宇宙の記憶】(本城)
 最近だと並木伸一郎さんの『完全版 世界のUFO現象FILE』(学研・2011年)で本物扱いされていました。

14.10万年前の金属コイル 【ウラル山中で発見されたナノテクノロジーの産物】(原田)
15.古代の天文盤「ネブラ・ディスク」【考古学の常識を打ち破る「真のオーパーツ」】(本城)
16.レイラインは存在するか?【見えざるエネルギーが通る「光の道」】(山本)

第3章 神秘の「中東・アフリカの古代文明」の真相
17.ギザの大ピラミッドの不思議【すべてが謎に包まれた世界一有名な巨大建造物】(ナカイ)
18.ギザの大スフィンクスの謎 【いまも囁かれる「超古代文明の遺産」説】(原田)

19.アビドス神殿のヘリコプター【古の神殿に刻まれた超古代文明の証】(本城)
 真相を紹介しているサイトでは海外も含め、具体的にどのパーツがどのヒエログリフと対応しているのか、といったことを解説しているところがありませんでした。そこで今回、調査にあたりヒエログリフを勉強し、具体的にパーツごとに解説してみました。

20.サッカラ・バードは空を飛ぶ?【古代エジプトの精巧な「飛行機」模型】(本城)
 日本でよく紹介されるカリル・メシハ博士による飛行実験の問題点の指摘と、日本では紹介されることがなかったマーティン・グレゴリーの飛行実験について解説しました。

21.銃創の空いた頭蓋骨【進化論を揺るがす動かぬ証拠】(ナカイ)

22.南アフリカの金属球【数十億年前の地層から発見された「超古代文明の証拠」】(ナカイ)
 金属球自体の解説の他に、展示されている博物館のガラスケースの中で「1年に1回転か2回転の割合で、ごくわずかずつ、それも決まって反時計回りの方向に自転する」というミステリーの真相が面白いです。

23.タッシリ・ナジェールの宇宙人【サハラ砂漠の真ん中にある正体不明の岩絵】(ナカイ)
コラム1.中東の古代文明概論 【現代人の想像を超える驚きのテクノロジー】(羽仁)

第4章 摩訶不思議な「アジアの古代文明」の真相
24.ムー大陸は実在したか? 【もうひとつの「失われた大陸」の謎】(藤野)
 これまた3分1の分量になってしまったのは残念でした(とはいえ詳しいです)。末筆でも触れられていますが、いずれ何らかのかたちで完全版の原稿を発表していただけるように私も協力したいと思っています。

25.ジャワ島のロケットレリーフ 【太古の遺跡に刻まれた宇宙の記憶】(ナカイ)
26.超古代の伝説「アダムの橋」【スペースシャトルが撮った古代インドの神話の橋】(本城)
27.周処のアルミ製ベルトバックル【古代の遺跡から発掘された驚愕の金属製品】(原田)

28.中国・明代のスイス製腕時計【約600年前の墓に埋もれた摩訶不思議な品】(ナカイ)
 今回、扱った項目の中では一番新しいオーパーツです。続報がなくてどうなっていたんだろうと思っていたら、実は続報があったことがわかって参考になりました。

コラム2.チャーチワード=日本人説の謎【『失われたムー大陸』の著者は日本人?】(藤野)
 これはマニアック。そもそもなぜこの説が生み出されたのか、その真相は何なのか、といったことが解明されていて面白いです。

第5章 幻想と夢幻の「日本の古代文明」の真相
29.宝達志水町のモーゼの墓【伝説の賢者は日本で死んでいた!】(本城)
 すでに発表済みの原稿に、竹内文献の解説、不可思議な地名、巨人の骨伝説などを盛り込んで加筆しました。

30.「聖徳太子の地球儀」の真実【太子ゆかりの古刹に眠る驚異の秘宝】(原田)
 こちらも類書で発表済みでしたが、今回はこの本のために原田さんが現地調査をされていて、新しい記事になっています。

31.「カタカムナ文明」とは何か?【古代日本人が残した超科学テキスト】(原田)

32. 新郷村のキリスト伝説 【イエス・キリストの墓と謎のピラミッド】(寺薗)
 寺薗さんが現地へ行って調査されています。写真や現地情報も豊富です。

33.皆神山のピラミッド伝説【超古代文明のルーツは長野だった?】(皆神)
おわりに――超古代文明の夢とロマン(本城)
執筆者紹介

posted by ASIOS at 09:34| Comment(13) | TrackBack(0) | ASIOS更新情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月12日

イベントについてのお知らせ

 本城です。
 振替公演を5月に行う方向で調整していたのですが、出演者の予定とカルカルのスケジュールがどうしても合わず、さらに先へ延期させてさせていただくことになりました。すみません。

 今のところ諸々のスケジュールを考えますと、9月くらいになりそうです。その分、ゲストも追加でお呼びし、内容もさらに充実させるつもりでいます。日程が決まりましたら、改めて告知させていただきますので何卒よろしくお願いします。
posted by ASIOS at 10:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ASIOS更新情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする